藤井さんは現在おいくつですか?
藤井:今40歳です。
ちょうどノンリニアが出てきた世代ですね。
藤井:苦労した時代ですね。今は本当うらやましいです。
パソコンやソフトも高かった。
藤井:高いし、不安定でした。
藤井さんが映像の世界に入ったきっかけは?
藤井:父親がグラフィックデザイナーで、小さい頃からデザインの本などは見ていました。大学でグラフィック系には行かずに、製品デザイン、プロダクトデザインをやりたいなと思って、勉強していたんです。
学校でプレゼンなどをするときにMacを使うようになって、当時は映像をMacで作るのは大変で…。Premiereもありましたけど、今のとは比べものにならないくらい機能が少なかった。
それでも海外のオープニングタイトルのようなものが、なんでMacで出来ないんだろうと、Premiereやディレクターというオーサリングソフトなどで、ずっと試していました。
そんな中、テレビ朝日クリエイトという会社に就職して、そこで初めてAdobeの方がAfter Effectsを持って来たんですよ。それまでAfter EffectsはAdobeの製品ではなく、Version3.0からAdobeが買収したんです。
そこでAdobeの担当者が、こういうソフトをAdobeで扱うようになったんですけど、さっぱり分からないんで、少し使ってみてもらえませんか、と。
直接僕の所に来たわけじゃなくて、最初は上司のところに来て、上司も察してくれたのか、「藤井君こういうの好きでしょ」って。
「使ってみてよ、好きなように」って言われて、僕の使っていたマシンにAfter Effectsをインストールしてもらい、使ってみたら、「これだよ。これが欲しかった。」となりました。
使いやすいというか分かりやすいですよね。とりあえず全部読みこむ。Illustratorのファイルも、Photoshopのファイルも。ムービーファイルも。Photoshopはレイヤーになっているのに、全部動かせて、それに音も付けられて、QuickTimeで吐き出せる。
簡単にできちゃうじゃん、すごく苦労してこれまでやっていたのは何だったんだよと。しかも、プラグインていうのもあるらしいよと。
どんどん会社に買ってもらって、やればやるほど楽しくてしょうがなかったですね。
きっかけはコンピューターなどが好きで、そして映像をどんどん作るようになった?
藤井:きっかけはそうですね。コンピューターが好きですね。
篠原:最初はデザインをされていたんですよね?
藤井:はい、デザインをやっていて、本当は家電メーカーに行きたかったんですよ。でもどうしてだったかな。テレビ局も受けてみようと思って。当時は、会社入ってから覚えていいよっていうスタンスだったんですね。今って即戦力じゃないと入れないじゃないですか。
その頃はみんな初心者だから、会社にある機材で、それこそ3DCGとか、アニメーションとかも覚えて下さいみたいなスタンスだったんで、すごくラッキーでしたね。
篠原:After Effectsも初めの頃は、説明書も何もなかったんですか?
藤井:Adobeが出していた印刷されたマニュアルがあったんですけど、それしかなかったんですね。
篠原:英語ですか?
藤井:いや、それは日本語になっていました。
篠原:教えてくれる学校もないですよね。
藤井:そのマニュアルは分かりやすい作りだったので、そんなに苦労はしなかったですね。
藤井:プラモデルとか、ラジコンの世代ですね。
篠原:小学生は何が得意でした?
藤井:小中学の成績はそれなりに良かったです(笑) 図工も好きでした。
小学校、中学校は勉強を頑張っていたんですけど、高校になってバンドにシフトして、楽器をずっとやっていました。
どのような音楽を?
藤井:分かりやすく言うと、フュージョンっていうジャンルですかね。カシオペアやスクエアとか。
今も音楽を?
藤井:今もやっています。今はジャズにシフトしています。
篠原:あのサイトを見たら、何者なんだろうって思いますよね。
篠原:自主制作でアニメーションを作られたりはしているんですか?
藤井:音楽が趣味だと思っているので、音楽で自主的に作曲をしたり、バンド活動はするんですけど、映像制作は基本的にデザイナーと思っていて、アーティストと思っていないんです。この説明は難しいですね。
デザイナーは必ず発注者がいるじゃないですか、アーティストは自分から発信するじゃないですか。アーティストは音楽ではやるけど、デザインではあまりやっていこうとは、まだその域に達していないと思っています。
篠原:自分の作れる音楽に映像を組み合わせたりとか。
藤井:僕の作る音楽と映像は合わないんですよ。僕の弾くジャズはすごく暗いんです。CG系の映像に合うのって、もっと「ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、」って曲の方が絶対合うじゃないですか。テクノっぽいものの方が。全然合わないんですそこは。
面白いですよね。ゼロ発信の気持ちは誰もがあるのに、それを音楽に向けている。
藤井:ゼロ発信するのは年賀状くらいですね。後はなんだろう。今までいっぱい作ってきた結婚式のビデオとかですかね。
それも発注者がいるじゃないですか。好きに作っていいよって言われても、そういうものでもないし…。
篠原:でも、藤井さんに結婚式のムービーを頼んだら、藤井さんのテイストでやってほしいです。
藤井:「ayato@web」は意識して、たまたまあのようになっているんですけど、あれは実写を使わずにAfter Effectsの中だけで完結するようにしないといけないじゃないですか。
だからあえてそうしているだけで、普段は別に実写の仕事もやっているし、クロマキーも使っています。そういうのはTIPSとして載せられないから、結果的にああいうテイストになっているんですね。
だからあれがすべてだと思われても違うかなという。そういう縛りを設けてやっている感じですよね、あれは。
僕らは藤井さんのゼロ発信見てみたいと思いますよね。
藤井:そうですね。ゼロ発信…そのうち出来るのかな。なんだろう、料理人みたいに自分のことを思っているので、食べてもらう人がいないと作り始められないというか、食べてくれる人に対して、どういうのを食べたいですかと、コミュニケーションしていくのが第一なんですよね、映像に関しては。
そういった意味では、「ayato@web」はみんなが欲しそうなものを増やしていっているから、あのような形になったのかもしれないですね。