代表取締役
向井 宏
ディレクター
藤原 果歩
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代表取締役
向井 宏
大阪の映像専門学校在学中に重病にかかり、一時休学。奇跡的に復帰してからは映像作りに没頭し、卒業後はフリーの映像制作者として国内で活躍。29歳の時にマレーシアへ渡り、映像で生計を立てながら暮らす。帰国後、2007年にボーダーレスを設立。
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ディレクター
藤原 果歩
大学卒業後、計3年間映像学校に通い制作技術を学ぶ。一度はSE職に就くが映像業界への転身を決意し、2020年ボーダーレスへ入社。持ち前の知識や磨き上げた企画力を武器に活躍するエースディレクター。
映画ファン2人が文化的背景を交えて語る「好きなタイトル」と「映画監督」の話
初めて会った時の印象を教えてください。
向井
面接で藤原さんと会話した時に、イメージフォーラムの映像研究所に通ってたって聞いてすごく興味が湧いたんだよね。僕らみたいな映像好きにとっては聖地みたいな学校なんだけど、職業として映像を作るというよりはもっと特殊というか…本当に映像だけを探究したい人たちの集まりみたいな場所だから。
藤原
確かに、そうですね。
向井
だから面接の時、本当にうちで良いのかって何度も聞いたよね?(笑)
藤原
はい、聞かれました(笑)イメージフォーラムでは、「映画って自由でいいんだ」っていうことを教わりましたね。
向井
それで好きな映画を聞いたらジョナス・メカス監督の『リトアニアへの旅の追憶』って答えて、それにもちょっと驚いた。第二次世界大戦でアメリカに亡命したメカスが、故郷のリトアニアへ帰る旅路を記録したものだよね。手持ちの16mmフィルムカメラで撮影された、DVDにもなってないような実験映画。
藤原
「日記映画」とも言われていますよね。
向井
そうそう。あんな風な表現って当時はなかったから、衝撃だったよ。
藤原
確かにメカスのような個人映画も好きなんですけど、好きなタイトルをずらっと書き並べると年代が古いだけで意外とベタなんですよ。現代の映画に続いているような、王道が好きなんです。
向井
そうなんだ。
藤原
例えば今のアメリカ映画ってテンポがいいなって思うじゃないですか。でもそれは結局1930~40年代のスクリューボール・コメディ(※1)が原点なんですよね。アメリカ映画のテンポの良さってその時点で完成されていて、それが2000年代にも続いてるんですよ。エンターテインメントとしての技術は当時すでに発明されて、すごいレベルに至っていたっていうところに惹かれます。
好きな映画作品や好きな監督について教えてください。【国内編】
向井
最近の監督で好きな人はいる?
藤原
濱口竜介監督が好きです。『偶然と想像』は、もしかしたら日本映画史上1番好きかもしれません。
向井
最近、すごい勢いだよね!濱口監督!是枝監督とかは?
藤原
是枝さんも好きですね。『歩いても 歩いても』とか。是枝監督と樹木希林さんの組み合わせが好きなんですよ。
向井
北野武は?
藤原
好きですけど、みんなほどではないかもしれません。北野監督が好きな人って本当に好きですもんね。私は『あの夏、いちばん静かな海。』が好きでした。
向井
なんであんな作品が撮れるのかって思うよね。自主製作だしお金をかけてるわけでもないから下手したら僕らでも撮れるんだけど、何か違うんだよ。しかも、恥ずかしげもなくやれてしまうっていう。
藤原
1番恥ずかしがりそうなタイプじゃないですか?
向井
そうなんだよね。
藤原
北野監督は超ロマンチストですよね。
向井
『Dolls』は見た?
藤原
見ました。でもあんまり好きにはなれなかったです…
向井
あれ、年取ったら好きになるよ!僕も若い時、超絶恥ずかしくて嫌いだったんだけど、年取ってから見たらすごい傑作なんじゃないかと思ったもん。
藤原
え、何歳くらいですか?
向井
40超えてからかな。
藤原
そうなんですね、見返してみよう。北野監督が本当に売れはじめたのって座頭市とか、アウトレイジくらいからですよね。
向井
そうだね。
藤原
アウトレイジで売れたのって、嬉しい反面監督的にはちょっと切ないんじゃないかなって、当時のインタビューの言葉の端々から感じました。やっぱり、得意なこととやりたいことって一致していない場合があって。北野監督はまさにそれだと思うんですよ。
向井
彼の場合は作家だけど演者でもあり、お笑いのトップでもあるからかなり多面的だよね。サービス精神があるというか、目立ちたがり屋だしさ。作家としての能力はふり切っているのに、観衆を喜ばせるために色々なものを作ってしまう。ファンとしては『ソナチネ』や『あの夏~』のような映画を延々と撮り続けてもらいたいんだけど。
好きな映画作品や好きな監督について教えてください。【海外編】
向井
レオス・カラックスとかは好き?
藤原
初期の作品が好きです。『ボーイ・ミーツ・ガール』とか『ポンヌフの恋人』とか。
向井
初期の作品はいいよね。この前フェデリコ・フェリーニの『道』を久しぶりに見たよ。いいね、あれ。
藤原
いいですよね。
向井
やっぱり上手いな、編集とか。
藤原
そうなんですよ、上手なんですよね。昔の映画だから何か劣っているとかは全然なくて、むしろ現代までに残る名作ってやっぱり上手いし、見やすいんです。
向井
久しぶりに見たけどやっぱり引き込まれるんだよね。大胆に省略したりするんだけど、構成とか編集がすっごく上手い。藤原さんはヌーヴェルヴァーグ(※2)が好きなの?
藤原
そうですね。私はフランスにコンプレックスがあって、大好きなんです。1番好きな映画監督は?って聞かれたら何人も挙げちゃいますけど、フランス人率が高いです。
向井
へぇ。フランス映画のどこが好き?
藤原
やっぱり…エスプリですかねぇ(笑)
向井
(笑)
藤原
もし「エスプリって何ですかって?」聞かれたら私はジャック・タチを見てと答えます!あと、ルイ・マル。
向井
『ぼくの伯父さんの休暇』かな?
藤原
そうです。あと『プレイタイム』や『トラフィック』とか。北野武ってコメディアンであり映画監督ですけど、実は大昔のフランスでも同じくコメディアンであり映画監督であるジャック・タチという存在がいたんですよね。ジャック・タチは色んな作品で「ユロ」っていう名前の叔父さんの役を演じ続けているんですけど、彼がもうエスプリに飛んだ、センスの塊なんです。上手く表現できなくて、とにかく見てほしいとしか言えないんですけど…
向井
僕、ちゃんと見たことないかもしれない。『菊次郎の夏』は『ぼくの伯父さんの休暇』のオマージュとも言われてるよね。
藤原
そうなんですか?でもやっぱりコメディアンってところで重ねちゃいますよね。『プレイタイム』って彼の集大成と言われてる映画なんですけど、当時の価格で1093億円かけてパリの近くに街を作ったんですよ。モダニズム建築の美しい街をセットで作って、2年かけて撮影をしているんです。
向井
今度見よう。
藤原
見てくださいぜひ。目が幸せになります。フランス人はやはり日本人にはないものを持っていると私は思ってて。ルイ・マルは1958年に25歳で『死刑台のエレベーター』を撮っているんですが、その2年後に『地下鉄のザジ』っていう180度違うテイストの映画を撮っているんですよ。
向井
僕は、ダルデンヌ兄弟が1番好きかも。
藤原
え、歴史上の監督でですか?
向井
うん。
藤原
『ある子供』は好きでした。
向井
僕は『ロルナの祈り』が好き。なんていうか、この作品って不完全なんだよね。でも、愛が生まれた瞬間を確実に表現している。
藤原
すごくヒリヒリしますよね。見ていて胸が痛くなる作品ばかりで。
向井
「人生って辛いよな」って。でも、噛みしめたくなるよね。
藤原
避けちゃいけないっていう、使命感を感じます。
向井
ダルデンヌってドキュメンタリータッチで、即興で撮ってるんじゃないかと思わせる感じなんだけどそうじゃないんだよね。彼らの撮影方法って、まる1ヶ月間スタッフのスケジュールを空けさせて、ひたすらカメラワークとかを完璧になるまで練習させるんだって。
藤原
ドSじゃないですか(笑)
向井
ドSだよな(笑)だから、撮影現場では決まったことをやるだけっていう。精密に作られてるんだよ。
藤原
精密に作ってるように見えないのがすごいですね。
向井
うん、初めて見た時とか異常にカメラワークが上手いと思ったもん。完璧なんだよ。でもそれだけ練習してるんだから当然だよね。あんまり映画っぽくないっていうか、いわゆる演劇のような作り方をしている。学べるし、理想だと思う。
藤原
ハリウッド超大作にない魅力はそういうところじゃないですか。ヨーロッパ映画ならではの。
向井
そうかもね。ロベール・ブレッソンとかは好き?
藤原
好きです。『やさしい女』とか。
向井
編集のいろはを勉強するなら、ブレッソン見たらいいと思うんだよね。
藤原
ブレッソンって、もしワンカットだけ見せられたとしても絶対にブレッソンだってわかりますよね。
向井
それわかる!
藤原
それがブレッソンのとんでもないところですよね。この世界って結局みんな同じようなカメラを使って同じような状況で映画を作ってるから、フェアじゃないですか。でもブレッソンの画って絶対ブレッソンの画なんです。
向井
なんでなんだろな?
藤原
独特のサイズ感とか…あと他人が撮らないようなものを撮りますよね。パッと思いつくのが手元のカットとか。
向井
こういう人って自分の目とカメラがもう同化してるんだろうね。
藤原
なんか、かっこいいですよね。カットを見るだけであの人だってわかるのは、映画監督として1番の称号のような気がします。ブレッソンの『白夜』も好きです。
向井
映画館で見たよ。
藤原
あの感覚ってやっぱりフランス人だなぁって思いますよね。センスっていう言葉あまり使いたくないんですけど、センスとしか言いようがない。
向井
ヨーロッパって、根底的に憂鬱な感じがするよね。歴史的背景とか宗教観からなんだと思うけど、圧倒的な絶望があるなかで、美しいものが生まれてる。
藤原
絶望の中だからこそ、異常に美しいんですよね。…すぐ恋人と死のうとしません?
向井
確かに(笑)
藤原
これはヨーロッパ映画あるあるだと思ってるんです(笑) 恋人ができたら普通なら楽しくデートして過ごせばいいじゃないですか。でもヨーロッパ映画だとすぐ逃げたり、死のうとするんですよ。その感覚ってないなぁって、若い時には思ってました。
向井
「ロミオとジュリエット症候群」だね。
藤原
そうなんです。
向井
日本にはない感覚だよね。ヨーロッパ映画って根底的に日本人には理解できないなって僕も思ったことがある。あの絶望感って植えつけられた宗教観とか風土からきてるものだから、日本人が理解しようとしても結局ミーハーにならざるを得ない。
藤原
その「絶対にわかり得ない」っていう気持ちが憧れになっちゃうんですよね。遠いものだから。
向井
アメリカ映画に関しては戦後に日本人は文化を吸収してるから同一感あるけどな。ヨーロッパはやっぱり遠いよね。アメリカ映画は見る?
藤原
見ます、大好きです。アメリカ映画に影響されていない国は無いでしょうね。フランスの『エドワールとキャロリーヌ』なんてまさに、アメリカのスクリューボール・コメディの影響を受けてますよね。 フランスとアメリカってよくお互いを嫌い合ってる風刺画なんかがありますけど、カルチャーをけん引してきた2大国だからやっぱりお互いに影響し合ってるんですよね。映画でもそうで、フランスで流行ったものが次にアメリカで流行ったり、その逆があったり。だから映像好きにとってフランス映画とアメリカ映画は避けられない道ですよね。
向井
『レオン』は?
藤原
好きですね。
向井
でもあれはずるいよな。嫌いな人がいないようなストーリー設定だし。
藤原
夢映画ですよね。無口で不器用な男と異常に可愛い女の子っていう。
向井
ラブストーリーだもんな。
藤原
そうですね。みんな大好きですよね。
向井
『ニキータ』とかもな、ずるいんだよね。あと僕の中で同じ部類に入ってるのが『ニュー・シネマ・パラダイス』と『ショーシャンクの空に』。
藤原
わかります!好きだけど好きって言いたくないシリーズですね(笑)
向井
そうなんだよ(笑) でも社内でここまで映画について話せるスタッフって少ないと思うんだけど、藤原さんからしたらボーダーレスのみんなにもっとこんな映画を見てもらいたいとかある?
藤原
うーん… 私が昔の映画を見ていて良いなって思うのは、タイムスリップなんですよ。映画1本2時間見るだけで時空をも超えることができる。なので、1920年代くらいまでなら誰でもみんなタイムスリップできるっていうことはもっと知ってもらいたいですね。色んな国に行けるし。私自身、それで知ったカルチャーとかファッションがいっぱいあるから。
向井
良い映画を見ると、寂しくなくなるよね。
藤原
落ち込んでても、もっと辛い思いをしている人がたくさんいるんだって思わされますよね。
最近見た映画について教えてください。
藤原
最近良かったのはエリザ・ヒットマンの『17歳の瞳に映る世界』とか、あと日本だと『ドライブ・マイ・カー』と『偶然と想像』ですかね。
向井
『ドライブ・マイ・カー』まだ観てないなあ。僕は『シン・ウルトラマン』見てきたよ。
藤原
どうでした?
向井
たぶん、ウルトラマンのことがすっごい好きな人が見ると超大絶賛なんだろうな。僕はそこまでウルトラマンが好きなわけじゃなかったから。映画っていうフォーマットを使った、ウルトラマン好きのコミュニティみたいな感じかな。
藤原
なるほど。
向井
今ってヌーヴェルヴァーグに近い革新的な時代なのかなって思う。劇場版の映画でもスマホで撮ってたりするもんな。
藤原
全編スマホの映画がありますもんね。
向井
僕なんか昔気質の映画が好きだけど、みんなには新しいことをしてほしいし、自分もしていかないとなとは思うよ。将来的には、もしかしたらユーチューバーとかティックトッカーだって芸術的な評価を得ているかもしれないしね。
藤原
確かに、有り得ますね!
ボーダーレス
お二人とも、ありがとうございました!
※1 スクリューボール・コメディ
1930年代初頭~1940年代後半にかけてハリウッドで盛んに作られたコメディ映画のジャンルのこと。「スクリューボール」は「変わり者」の意味。
※2 ヌーヴェルヴァーグ
フランスで1950年代後半からはじまった映画運動のこと。フランス語で「新しい波」を意味し、「ヌーベルバーグ」と表記されることもある。
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