インバウンド向け動画のPR効果とは?成功事例と集客アップのコツを解説
2024.05.23
魅力的な旅行先として世界的にも評価され、インバウンド需要が高い日本。
特に大きな経済効果が期待できる観光業界や地方自治体にとって、インバウンド戦略は必須課題です。
本記事では、日本に訪れる外国人観光客を魅了し、地域や観光サービスを効果的にPRできるインバウンド向け動画についてまとめました。目的に沿った内容の考え方や、成功事例、集客アップのコツなど、インバウンド向け動画の制作・活用に向けた具体的なアプローチ方法について解説しています。
【この記事でわかること】
- インバウンド向け動画とは?
- インバウンド向け動画のメリット
- インバウンド向け動画の内容と目的
- インバウンド向け動画の手法と制作事例
- インバウンド向け動画制作のコツと注意点
インバウンド向け動画とは?
インバウンドはもともと「外から入ってくる」「到着する」といった意味の英語で、日本では主に訪日旅行や外国人観光客を指す言葉として使われています。
インバウンド向け動画とは、訪日外国人観光客のほか、留学など長期滞在を検討している方に向けて制作されたプロモーション映像のことです。日本の文化や観光名所、グルメや伝統芸能などを紹介し、視聴者である外国人に日本の雰囲気を疑似体験させることができるコンテンツです。
観光立国を目指す日本のインバウンド需要は高く、アフターコロナで急回復した現在は右肩上がりを続けています。観光庁の訪日外国人消費動向調査によると、2023年の国内インバウンド消費は5兆円を超え、過去最高額を更新したということ。
国や自治体による支援制度などもあり、インバウンド事業に力を入れる企業や団体はますます増える見込みです。
インバウンド向け動画の3つのメリット
インバウンドの誘致対策として、動画は非常に有用です。インバウンド向け動画をPRに活用するメリットは、大きく3つあります。
①言葉の壁を超えて伝えることができる
動画はもともと、文章や写真に比べて視覚的・直観的に伝えることに優れています。
インバウンド需要に対応した動画を制作することで、言語にとらわれず、地域やサービスの魅力をアピールすることができます。また、YouTubeの多言語化設定や字幕を上手く活用すれば、より広い国籍のターゲットにリーチさせることも可能です。
②SNSで拡散されやすい
SNSは、近年の観光業界・旅行業界にとって重要な流入チャネルです。
旅先の情報収集にSNSを利用する人は国内外問わず多く、世代によっては旅行サイトよりもリアルなビジュアルや口コミが見られるSNSを重視するという声もあります。
動画は、YouTubeをはじめInstagramやTikTokなどのSNSとも親和性が高いため、SNSでの活用を前提に制作することで高い宣伝効果が見込めます。企画や内容次第では、国を超えて多くの人に拡散・共有されることも期待できます。
③空気感や食べ物の魅力を感じてもらいやすい
視聴によって得られる情報量が多い動画は、写真だけでは伝わりにくい情報を伝えるのに向いています。
単にモノや景観を見せるだけでなく、土地が持つ空気感や臨場感までを表現し、見る人の没入感を高めることができます。来日経験がない海外の視聴者にもリアルな日本のイメージを抱いてもらうことができるため、インバウンドの誘致にも有効です。
旅の目的として人気が高い “食” とも相性が良く、シズル感※ を意識した演出をすることで日本ならではの食文化の魅力を伝えることができます。
※主に食材や料理の宣伝広告の際に使われる表現。食欲や購買意欲を刺激するみずみずしさや臨場感のこと。
インバウンド向け動画の内容と目的
PR効果を最大限発揮させるためには、単に「訪日外国人観光客向けのプロモーション動画を作る」という理由だけで制作することはおすすめできません。
はじめにインバウンド向け動画によって得たい効果=「目的」を明確にし、それに沿った内容で制作することが大切 です。制作会社に依頼する場合は、動画の目的によって提案される企画の内容も変わります。
あらかじめ目的を設定しておくことで企画の精度が上がり、目的に対して適切なアプローチができるようになります。
【目的】日本に興味を持ってもらいたい、訪日のきっかけ作りがしたい
【企画例】観光名所や世界遺産など日本でしか見られない観光資源を紹介し、魅力を伝える動画
【目的】観光サービスやイベントへの期待感を高めたい
【企画例】まるで現地にいるかのような臨場感を演出し、視聴者にサービスやイベントを疑似体験させる動画
【目的】異文化理解を深めてほしい、文化交流を促進したい
【企画例】祭りごとや工芸品、芸能、習わしなど日本ならではの伝統文化やその歴史を紹介する動画
【目的】訪日旅行の計画に役立つ情報を提供したい
【企画例】観光地へのアクセス方法や施設概要などオフィシャルな情報を紹介し、現地での過ごし方のモデルプランを提案する動画
【目的】観光地(地域)のブランディングがしたい
【企画例】特産物や絶景、レジャー、ご当地グルメなど、その土地にしかない体験やモノをアピールし、印象づける動画
インバウンド向け動画の手法と制作事例
インバウンド向け動画を制作するときは、目的に合わせた手法(表現方法)を選択することでより効果が得られやすくなります。
①イメージ動画
熊本市|Quality Living City Kumamoto, JAPAN
※他社制作動画
高画質で美しい映像と、映像にマッチした音楽が印象的なインバウンド向け動画。BGMに合わせて地域の観光名所やグルメ、工芸品、イベントなどの映像を展開させていく手法で、ナレーションや台詞がないのが特徴。地方自治体や鉄道業界の観光PRなどに使われることも多い。
【メリット】
- 台詞がないため翻訳の必要がない
- ドローン撮影なら写真では表現できないアングルも撮影できる
- 余計な情報がなく、景観の美しさに没頭させることができる
- 画を台詞に合わせる必要がないため、短時間で多くの視覚情報を伝えることができる
【企画・制作のポイント】
- 撮影スポットやBGMは日本人目線ではなく外国人目線で考える
- 外国人はどんなものに惹かれるのか?を掘り下げる
- ナレーションや台詞がない分、単調になってしまうことがあるので注意
- 編集によってテンポや強弱をつけるなど、飽きさせない工夫をする
②観光案内動画
Renting A Kimono in Tokyo | 着物を借りて浅草を観光巡り
※他社制作動画
日本のナイトライフのエチケット |初心者向け旅行ガイド
※他社制作動画
テレビ番組のように案内(進行)役を立て、観光スポットや地域の紹介を行うインバウンド向け動画。動画の視聴者として想定している国籍のキャストをメインに、英語(またはメインキャストの母国語)で進行されることが多い。
【メリット】
- 地域の魅力を身近に感じてもらうことができる
- 飾らないリアルな日本の姿を見てもらうことができる
- ユニークなネタを挟むことで、安心感や親近感を与えることができる
【企画・制作のポイント】
- 自然な雰囲気を出す必要がある
- 台詞っぽくならないよう、台本を作り込みすぎない
- アドリブに任せる部分が多いため、キャストは入念に選ぶ
- 1つの動画内で多数のスポットやコンテンツを紹介するのには向いていない
- 1動画1スポット(コンテンツ)にしてシリーズものとして制作するのも有効
③アニメーション動画
インバウンド向けマナー解説動画「温泉の入り方編」日本語版(英語字幕)
※他社制作動画
インバウンド向けマナー解説動画 「旅館での過ごし方」日本語版(英語字幕)
※他社制作動画
訪日旅行をするときの注意点やマナーなどをアニメーションでまとめたインバウンド向け動画。特定の観光スポットや施設のPRのためではなく、不安や疑問を解消して日本に訪れるハードルを下げる目的で制作されることが多い。
【メリット】
- 日本と海外の文化の違いを理解してもらうことができる
- 「知らないこと」による事故やトラブルを未然に防ぐことができる
- 撮影不要なため、比較的少ない費用で制作できる
【企画・制作のポイント】
- 日本と海外の文化の違いを意識して構成を練る
- 日本独自のルールやマナーについて、外国人目線で表現する
- できるだけシンプルに「誰が見てもわかりやすい」を心掛ける
- 誤解を生む表現は避ける(誤解を生みそうであれば補足を加える)
④インパクト動画
楽しい日本語英語の歌【東京盆踊りTokyo Bon 2020】Namewee Ft.二宮芽生 & Cool Japan TV @亞洲通吃2017 All Eat Asia
※他社制作動画
インパクトのある企画やユニークな内容で日本の魅力を紹介するインバウンド向け動画。歌やダンスで動きを出したり、派手な演出をすることも多い。
【メリット】
- 面白い動画はSNSで注目されやすい
- SNSやメディアでの拡散が期待できる
【企画・制作のポイント】
- 企画が何より大切
- 「日本人が見て面白い」と「外国人が見て面白い」の違いを意識する
- オチをつける場合は海外の視聴者にもわかりやすくする
インバウンド向け動画制作のコツと注意点
インバウンド向け動画を制作するときのコツや注意点をまとめました。外注・内製、どちらのケースでもあてはまる内容なので、参考にしてください。
① 目的を明確にする
インバウンド向け動画の内容と目的の見出しでも前述したように、制作の前には動画の目的をはっきりさせることが重要です。動画によって何を達成したいのか、どのような課題を解決するためにインバウンド向け動画を制作しようと思ったのかを書き出してみましょう。
動画のテーマをブレさせないためには、1つの動画に対して1つの目的にするのがベターです。もし複数の目的がある場合は、目的に合わせて複数の動画を制作するか、最も重視する目的に絞って設定するのが良いでしょう。
【目的例】
- 訪日観光のきっかけになるよう、日本の魅力を伝えたい
- 地域の伝統的な祭りの雰囲気をリアルに伝えたい
- 観光名所へ訪日外国人観光客を呼び込むため、地域のブランディングをしたい
など
② ターゲット(ペルソナ)を設定する
ターゲット(ペルソナ)とは、インバウンド向け動画の視聴者として設定する人物像のことです。
ターゲット(ペルソナ)は、制作前に設定・共有しておくことが大切です。①で設定した目的のためにはどのような人に動画を見てもらうべきかを考え、動画によって心を動かしたい人物像をまとめましょう。
より目的にマッチした内容の動画になるのはもちろん、人物像に対して効果的なアプローチ方法を選択できるようになります。プロモーション活動の効率アップや、コンバージョン率のアップも期待できるでしょう。
【ペルソナの設定例】
- 出身国:フランス
- 年齢:28歳
- 性別:男性
- 言語:フランス語・英語
- 家族構成:パートナーと2人暮らし
- 良く使うSNS:YouTube・Facebook・Instagram
- 出身国の文化的背景:観光立国世界1位。芸術、グルメ、ファッションの文化が発展している。
- 性格:自己主張が強くロジカルなコミュニケーションを好む。プライベートやヴァカンスをとても大事にする。感受性が豊かでプライドが高いタイプ。
- 趣味:映画やアニメ鑑賞、料理、サイクリング。スキマ時間にはYouTubeで動画や映画を見ることもある。
- 嗜好:日本の漫画、アニメ、映画が大好き。映像のなかに出てくる日本の風景や文化にも興味がある。
- 旅行傾向:毎年夏のヴァカンスには長期休暇をとってパートナーと2人で国内外へ旅行へ出かける。
- 訪日旅行への興味:機会があればヴァカンスを使って行きたいと考えている。
- 旅行の目的:好きなアニメ映画の聖地巡礼。日本食を食べる。文化遺産を見る。
- 滞在期間:1週間~10日間程度を予定。
③ 地域や施設の魅力=「訴求ポイント」を洗い出す
①目的と②ターゲット(ペルソナ)が定まったら、訪日旅行のメリットになり得るものを洗い出しましょう。地域ならではの施設や食文化、絶景、体験、イベントなどの魅力を書き出して、動画の訴求ポイントを決めていきます。
項目が多くなりすぎる場合は、②で設定した外国人視聴者の趣味嗜好に合うかどうかで取捨の判断すると良いでしょう。人気観光地でオーバーツーリズムが騒がれていることもあり、メジャーな施設より知る人ぞ知る穴場を求める訪日外国人観光客も増えています。
【訴求ポイントの例】
ここでは、福岡県のインバウンド向け動画の制作を例にとってご説明いたします。
- 施設や歴史:太宰府天満宮、唐津城など多数の歴史的建造物。日本ならではの古都の風情。アニメの聖地と呼ばれる神社が周辺に複数ある。
- 食文化:別名「グルメの宝庫」。博多ラーメン、博多もつ鍋などの郷土料理。博多屋台と呼ばれる屋台メシ。新鮮な海の幸や季節の野菜を活かした創作料理。
- 体験:湯布院や別府など名泉が近い。心身を癒す温泉リゾート。温泉地でグルメや買い物も楽しめる。
- 絶景:海と山に囲まれた自然豊かな地。糸島半島、玄海国定公園、国営海の中道海浜公園など、美しい自然景観。
- イベント:博多祇園山笠、博多どんたく港まつり、大濠公園花火大会など、伝統色の強い祭り。
- ショッピング:博多座、マリノアシティ福岡、天神地下街など、大型商業施設やアミューズメント施設、繁華街が充実。
- 交通アクセス:福岡空港、新幹線、地下鉄、バスなど交通インフラが充実。ICが多く国内外からのアクセスが良好。
- 県民性:「博多人情」と呼ばれるほど情に厚い。友人知人を大切にする温かい県民性。観光客に対してフレンドリー。祭りごとが好きで賑やかな人が多い。
④ 適切なフォーマットを選択する
①~③の内容が定まったら、インバウンド向け動画のフォーマットを選択しましょう。動画のフォーマットは、動画の使用を想定している場所やデバイス、動画のジャンルなどによって変わります。
動画によって集客するためには、シーンに合わせた適切なフォーマットで制作することが重要です。
例えばInstagramやTickTokなどSNSでの拡散を目指すのであれば、モバイルデバイスで視聴されることを想定したフォーマットにする必要があります。フォーマットについてはやや専門的な内容になるため、動画制作会社に相談し、提案してもらうと失敗がありません。