NDフィルターの役割とは?使い方の基本をプロが解説【動画撮影初心者】
2023.02.14
今回の『動画の学校 ボーダーレスゼミ』のテーマは、一眼レフやミラーレス一眼の撮影には欠かせないNDフィルターの役割について。NDフィルターの仕組みや使い方、具体的な使用例をわかりやすく解説していきます。
アシスタントはタレントの華綸(けりん)さんです。
NDフィルターは、装着することでカメラのレンズに入る光の量をコントロールできるフィルターです。
レンズの操作と併せて使うと適正露出での撮影がしやすくなり、表現の幅が広がります!
1. レンズの光量をコントロールする3つの操作
通常、レンズに入る光の量は3つの操作でコントロールします。
① レンズの絞り
レンズに入る光の量を物理的に少なくしたり、多くすることができる。
② シャッタースピード
シャッターが開いている間だけ光が入る。シャッタースピードが速いと光量を少なく、遅いと光量を多くすることができる。
③ ISO感度
小さな光も取り込んで映像化することができる。
感度が高いと光量が多くなり、画質は荒くなる。
感度が低いと光量が少なくなり、画質は美しくなる。
2. 被写界深度=ピントの合う幅をコントロールする操作
レンズの絞りは、光量以外に被写界深度にも影響します。
① 絞りを開くと?
被写界深度が浅くなり、背景がきれいにボケる。
② 絞りを閉じると?
被写界深度が深くなり、全体的にしっかりピントが合う。
3. ボケ味のある映像をきれいに撮影するには?
レンズの操作に加えて、NDフィルターを使って減光することでボケ味のある映像を撮影しやすくなります。
① 背景をボケさせるために絞りを開くと?
明るさが調整できず光が入りすぎてしまうことがある。
② 光量を少なくするためシャッタースピードを上げると?
動画のシャッタースピードは1/60や1/100が一般的なので違和感が出てしまう。
③ NDフィルターを装着すると?
絞りやシャッタースピードを変えずに光量を減らすことができるため、ボケのコントロールがしやすくなる。
4. 固定型と可変型の違い
NDフィルターは、大きく分けて固定型と可変型の2種類あります。
① 固定型NDフィルター
光を抑える量が固定されている。色ムラがなく、値段が安いのがメリット。
複数枚を持ち歩かなければならないため邪魔になりやすく、着脱が面倒なのがデメリット。
例)1/32、1/16など
② 可変型NDフィルター
光を抑える量を自由に調節できる。着脱不要なため操作が楽なのがメリット。
色ムラが出やすく、値段が高いのがデメリット。
例)1/4~1/64など
5. 固定型と可変型の使い分け
固定型NDフィルターと可変型NDフィルターはどのように使い分けたら良いのでしょうか?
①写真(静止画)の場合
色ムラが気になりやすいため、固定型を使う人が多い。
②動画の場合
色ムラは比較的気にならないため、可変型を使う人が多い。
6. NDフィルターの成り立ち
NDフィルターの利便性が注目されはじめたのは、動画業界では比較的最近の話です。
①業務用カメラにはNDフィルターが内蔵されていることもよくある
例)SONY PXW-Z150など
②一般的なミラーレス・一眼レフカメラにはNDフィルターがついていない
手振れ補正機能があるカメラにはNDフィルターが内臓できないという特徴がある。
③ミラーレス・一眼レフカメラの台頭でNDフィルターの需要が高まった
ミラーレスや一眼レフカメラで動画撮影をしたい人はNDフィルターが必須。どんな明るさでも被写界深度がコントロールでき、ボケ味のある映像が撮りやすくなる。
【豆知識】NDフィルターの番号からシャッタースピードを計算する方法
NDフィルターには「ND2」「ND16」「ND32」などの番号(数字)がついています。
この番号を使うと、NDフィルター装着時に適正露出となるシャッタースピードを計算することができます。
NDフィルターの番号の意味
NDフィルターについている番号は、「どのくらい光を通すか」を表わす数値です。
例えばND2は未装着時に比べて1/2の光量、ND32は未装着時に比べて1/32の光量になるという意味です。
番号が大きいほどフィルターが濃くなる(光量が減る)ため、その分シャッタースピードを遅くすることができます。
また、NDフィルターのパッケージに記載されている「5絞り分減光(絞り5段分減光)」などの表記は減光量を示しています。
こちらも数字が増えるほどフィルターが濃くなります。単位は「段」で表わし、1段で1/2、2段で1/4、5段分だと1/32の光量になります。
NDフィルター装着時のシャッタースピードの計算式
NDフィルターを装着した状態で未装着時と同じ適正な露出で撮影するためには、絞りを開くかシャッタースピードを遅くする必要があります。
以下の計算式を使うことで適正露出となるシャッタースピードを求めることができるので覚えておきましょう。
NDフィルター未装着時のシャッタースピード × NDフィルターの番号 = NDフィルター装着時のシャッタースピード
例えば、NDフィルター未装着時に適正露出となるシャッタースピードが1/60秒で、ND4のフィルターを使用する場合を計算すると…
1/60 × 4 = 1/15
つまり、1/15秒がNDフィルター装着後の適正露出となるシャッタスピードということになります。